めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

三島由紀夫 / 真夏の死

真夏の死―自選短編集 (新潮文庫)

真夏の死―自選短編集 (新潮文庫)

三島由紀夫 / 真夏の死 のレビューです。

1.作品を選んだ理由

 妻の本棚シリーズ。長編はまだ読んだことない。不道徳教育講座なら読んだことある。

2.内容

 様々な年代に執筆された11の短編に、三島自身による巻末解説を含む短編集。新潮文庫からのリリースで、付された自注及び刊行は1970年夏となっている。1970年秋には割腹自殺で死んでしまうので、ほぼ死の直前に書かれた解説と言っても良い。
   短編集の解説は難しい。あらすじは書いても仕方ない(調べればそこら中に情報があるので)。単純な感想として、とにかく流麗で豊かな語彙と、人間の精神を捉えた表現が素晴らしいな、と。美しいです。
 学校組織や同世代の友人に否定的な『煙草』の主人公は、肉体的・精神的にも強いわけではない少年なのだが、「周りが莫迦に見えて仕方ない」というような意識は、自意識強めで陰キャがち中高生にストレートな共感を呼びそう。自分もそうだったような気がする。
 『翼』。愛し合う従兄妹同士が、「相手の背中には翼があるのでは」と夢想することを軸とした話。「模倣が少女の愛の形式であり、これが中年女の愛し方ともっとも差異の顕著な点である」の一文は、なんだかすごくそうである気がして感動した。
 『真夏の死』は、主人公・朝子が2人の子供と親戚を水難事故で失い、助かったもう1人の子供と事故には居合わせなかった夫と共に、事故を受け入れ、精神的に回復する過程を描く(受け入れた・回復したとは言い難いのだが)。後半、朝子が事故後に再度子供を身ごもるあたり、地の文による怒涛の問いかけに、三島も人間の精神や生死の捉え方が良く出ているような気がした。
 気に入ったのはこんな感じ。あんまり理解できなかった作品もあるけど。『葡萄パン』は、若者言葉か?外人が登場するから?カタカナ語だったり、倒置語(オンナ⇒ナオン、ビール⇒ルービ)がいっぱい出てきて、なんだこれと思ったりしてた。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 お話そのものはわかったりわからなかったり。文章とテーマが自分の嗜好にハマるものは凄く面白いと思う。三島作品をもっと読もう。

4.どのような人に推奨するか

 耽美で美しい日本語の表現があります。ちょっと小難しいテーマもあり読みやすいかというと、そうでもない気がするが。でも評価されるだけの文豪なので、読んでみてください。私も長編を読んでみます。