三島由紀夫 / 真夏の死
- 作者: 三島由紀夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1970/07/17
- メディア: 文庫
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三島由紀夫 / 真夏の死 のレビューです。
1.作品を選んだ理由
妻の本棚シリーズ。長編はまだ読んだことない。不道徳教育講座なら読んだことある。
2.内容
様々な年代に執筆された11の短編に、三島自身による巻末解説を含む短編集。新潮文庫からのリリースで、付された自注及び刊行は1970年夏となっている。1970年秋には割腹自殺で死んでしまうので、ほぼ死の直前に書かれた解説と言っても良い。
短編集の解説は難しい。あらすじは書いても仕方ない(調べればそこら中に情報があるので)。単純な感想として、とにかく流麗で豊かな語彙と、人間の精神を捉えた表現が素晴らしいな、と。美しいです。
学校組織や同世代の友人に否定的な『煙草』の主人公は、肉体的・精神的にも強いわけではない少年なのだが、「周りが莫迦に見えて仕方ない」というような意識は、自意識強めで陰キャがち中高生にストレートな共感を呼びそう。自分もそうだったような気がする。
『翼』。愛し合う従兄妹同士が、「相手の背中には翼があるのでは」と夢想することを軸とした話。「模倣が少女の愛の形式であり、これが中年女の愛し方ともっとも差異の顕著な点である」の一文は、なんだかすごくそうである気がして感動した。
『真夏の死』は、主人公・朝子が2人の子供と親戚を水難事故で失い、助かったもう1人の子供と事故には居合わせなかった夫と共に、事故を受け入れ、精神的に回復する過程を描く(受け入れた・回復したとは言い難いのだが)。後半、朝子が事故後に再度子供を身ごもるあたり、地の文による怒涛の問いかけに、三島も人間の精神や生死の捉え方が良く出ているような気がした。
気に入ったのはこんな感じ。あんまり理解できなかった作品もあるけど。『葡萄パン』は、若者言葉か?外人が登場するから?カタカナ語だったり、倒置語(オンナ⇒ナオン、ビール⇒ルービ)がいっぱい出てきて、なんだこれと思ったりしてた。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★-
お話そのものはわかったりわからなかったり。文章とテーマが自分の嗜好にハマるものは凄く面白いと思う。三島作品をもっと読もう。
4.どのような人に推奨するか
耽美で美しい日本語の表現があります。ちょっと小難しいテーマもあり読みやすいかというと、そうでもない気がするが。でも評価されるだけの文豪なので、読んでみてください。私も長編を読んでみます。