めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

体験記:ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち(パナソニック汐留美術館)

体験記シリーズ。パナソニック留美術館の「ギュスターヴ・モロー展」に行きました。

1.鑑賞のきっかけ

 GW10連休の美術館目標の1つ。Cryptopsy "None So Vile"のジャケからオスカー・ワイルドサロメを読み、折よく開催中だったこの展覧会に行こうと思ったわけです。

2.内容

 ギュスターヴ・モローは19世紀後半に活躍したフランスの画家。象徴主義の代表格として言及される。象徴主義って何?という気がするが、以下のようなものであるらしい。

  • 19世紀後半、"印象派"の興隆とともに広まった芸術運動の一つ。
  • 産業革命の時代にあり、世の中が急速に変わりゆく世の中で、未来を不安視する人々がこれに反発し始める。
  • 人の生死や感情など、目に見えないものを表現する絵画が広まった。題材として文学や神話を借りて表現したため、"象徴派(主義)”と呼ばれる。

 へー。…さて、展覧会は本当にモロー尽くし。メインコンテンツはやはりサロメなのだが、同題材の絵画が複数あり、サロメテーマだけで数十枚の作品があった(習作含む)。

 サロメは聖書に登場する美しく若い王女で、「かわいいサロメちゃん、踊ってくれたらなんでもいうことを聞いてあげようね^^」というヘロデ王に対し、舞いの対価として国内に捕らえられた洗礼者ヨハネ(戯曲ではヨカナーンということになっている)の斬首を所望する。民衆の反対を恐れて洗礼者ヨハネを殺したくなかったヘロデ王だが、約束した手前、仕方なしに洗礼者ヨハネの斬首を命じる…ということで、サロメテーマの絵には妖艶な若い女性と斬首がセットで登場しがち。
 今回見ることができた『出現』では、サロメが指さす先に洗礼者ヨハネの切り落とされた首が浮いているという、なんとも不思議で非現実的な構図。絵を見て初めて知ったが、柱などの下書きが残った、いわば書きかけの作品だったのだね。

 他にも主に神話や聖書に登場する女性をテーマにした数多くの絵画があった。繊細な色使いだねえ。展覧会の一角には、モローの弟子(というか、モローが美術学校の先生だったらしい)となるジョルジュ・ルオーの特設会場もあった。ルオーは本館の所蔵品らしいので、ちょうどテーマに合致する展示だったというわけだ。

3.感想/評価(★の5段階)

 ★★★★-
 期待の通りであった。暗くて幻想的な絵が多い。

4.どのような人に推奨するか

 完全に作家個人に焦点を当てた企画展なので、モローファン・モローのことを知りたい人向けといってよかろう。

Ex.ギャラリー

ポスター。

唯一撮影可能だったところ。椅子に座っての撮影もしてみた。