Gojira / Magma
フランスのデスメタルバンド Gojira / Magmaをレビュー。
1.作品を選んだ理由
B!誌のインタビューで見たことはあったけど聞いたことなし。今回初めて買ってみた。
2.内容
2016年リリースの6thフルで、Roadrunner Recordsからの目下最新作。日本での人気はあんまりだけど、海外ではとっても人気があるらしい。以前大阪でSlayerの公演見たときのサポートアクトがこのGojiraだったような気がするんだが…。違ったかな?
デスメタルだと思って買ったんだけど、これは全然違いますね。テクニカルでスローテンポ、浮遊感がありつつグルーヴィ、そんな感じ。ギターの低音はデスメタル由来のものを感じさせるバスドラとシンクロした刻みを見せるが、メロディ感のあるフレーズを交えて空間を作っていく。ボーカルはデスヴォイスではなく、エフェクトがかった無感情なクリーンボイスと、メロディを追う咆哮ヴォイスで構成されている。
個人的な印象としては、NothingfaceとかAngel Ratsとかあたりのプログレッシブ・サイケデリックなVoivodのフレーズやメロディを持ちながら、そのスピードと重心を低く下げてヘヴィになったような…そんな感じ。ブラストビートやそれに類する高速パートはなく、体が揺れるようなゆったりしたテンポでおおらかなビートが多い。シンプルな中のテクニカルさは曲のちょっとしたリズムトリックやフレーズに表れている(#8 のワーミーペダルと刻みを組み合わたメインリフと、ズラしたようなリズムなんかは印象に残った)が、全体的にはシンプル。SE的パートも多い。
タイトルが"Magma"だから思うことかもしれないが、噴火や爆発そのものではなく、粘性を持って揺蕩うように流れる楽曲は、確かにMagmaっぽさを感じる。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★-
デスメタルだと思って聞くものではない。即効性のあるわかりやすいサウンドでもないんだけど、聞いていて気持ちよい。過去作も聞いてみたい。
4.どのような人に推奨するか
以前の作品を知らないので比較はできないが、この作品で大衆性を増したとかライトになったとか言われているようだ。 高速パートもデスヴォイスもないので、確かに攻撃性の高い純粋デスメタルファンに推奨するものではない。
生田哲 / 脳と心をあやつる物質 微量物質のはたらきを探る
脳と心をあやつる物質―微量物質のはたらきをさぐる (ブルーバックス)
- 作者: 生田哲
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/10/15
- メディア: 新書
- 購入: 10人 クリック: 69回
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生田哲 / 脳と心をあやつる物質 のレビューです。
1.作品を選んだ理由
最近お気に入りブルーバックスで、目について面白そうだったものを購入。
2.内容
1999年に講談社ブルーバックスからのリリース。薬学博士による最新研究に基づいた本ということだが、現在からすると20年前。最新の研究も調べてみたい。
人間の心は、神経細胞の間を流れる化学物質の種類と量によって決まる。その心の動きを物質の観点から語るのがこの本の試み。世間でもよく聞く脳内物質としてはアドレナリンやセロトニン、身近な物質としてはカフェインやミネラル等が代表的に登場するが、痛みを伝達するプロスタグランジンや快眠物質メラトニンなど、聞いたこともないような物質も多数登場する。
全体的に横文字・カタカナ語がものすごく多く、化学式・構造式も頻出するので、拒否反応がある人もいるかもしれない。自分はベンゼン環(作中では「亀」と表現される)とか基とかさっぱり忘れていたので、この本を読み返しながら学習した!ベンゼン環というのはC6H6で示される芳香族化合物のことらしいですね。2個くっつくとナフタレンになったりするとか。脳と心に影響を及ぼすノルアドレナリン、ドーパミン等は、亀-C-C-N(ベンゼン環-炭素-炭素-窒素)を含む構造式である共通点があるなどといった、まさに化学の話が出てくる。個人的にはこういうパートこそ勉強になり面白く読める。薬物の受容と耐性、うつ病・不安障害等のメカニズムが化学的に書かれているので、なんだか納得感がある。
この辺が面倒くさい人は、第4章の「身近な食べ物で脳と心に影響する物質」あたりを読むといい。朝食をなぜ食べる方がイイか、カフェインの効果や摂取量はどのようなものか、などが書いてあるよ。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★★
化学的で私は凄く好き。
4.どのような人に推奨するか
薬学化学に興味のある人に。うつ病や不安障害等はテーマとしてあるものの、精神ケアや心理面に述べた本ではなく化学物質の観点から語るものなので、中学~高校レベルの化学知識が土台にあったほうが方が良いのだと思いますです。なくても読めます。
Decapitated / Organic Hallucinosis
- アーティスト: Decapitated
- 出版社/メーカー: Earache UK
- 発売日: 2008/01/13
- メディア: CD
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ポーランドのデスメタルバンドDecapitated / Organic Hallucinosisをレビュー。
1.作品を選んだ理由
Decapitatedを4枚目まで買ったので、書いていくシリーズの続き。これが4枚目だね。
2.内容
2006年リリースの4thフルアルバム。こちらも大手Earache Recordsからリリース。あ、ボーカルがSauronからCovanという方に変更になっていますね。相変わらず2年ごとに作品をリリースしている。
ぶっとくファットなギターサウンドによるVoggの圧倒的な刻みは健在。なんだが、このアルバムから変則拍子や不協和音等のテクニカルデスメタルの方向性が強くなっている。#1 "A Poem About An Old Prison Man"で聞かれるリフにも、浮遊感のある不協和音リフと変則拍子なパートがあって、雑な説明をするとちょっとMeshuggahっぽいというかプログレッシブデスメタルというか、そういう感じが出てきた。ギターやドラムはハイスピードながらややマシーナリーな雰囲気。後はシンセサイザーやSE等を用いて結構曲の雰囲気づくりをするようになってきた。ベースがベロンベロンとしたアタック音で低音の存在感を出しているが、それも「っぽい」といえばそう。Meshuggahのアルバム"Chaosphere"がストレートなブルータルデスメタルと化した感じとでもいうか。
と、変わったところを説明したし、実際初期のThe デスメタルな作風と比較すると変わったなぁと感じるが、ブラストビートで高速に爆走するパートや種々の刻みリフによる快活なカッコよさは引き続き健在なので、そんなに腐すような内容ではないと思う。音質も良い。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★ー
好みかっていうとちょっと違うけどね。やっぱ1st/3rdのノリがええんや。
4.どのような人に推奨するか
ちょっと作風が変わったので、1st~3rdのファンにストレートに推奨できるかというと、それは違うかな。プログレデス的な雰囲気がアリなら、チャレンジしてみてどうぞ。クオリティは高い。
Decapitated / The Negation
- アーティスト: Decapitated
- 出版社/メーカー: Earache
- 発売日: 2008/01/13
- メディア: CD
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ポーランドのデスメタルバンドDecapitated / The Negetionをレビュー。
1.作品を選んだ理由
Decapitatedを4枚目まで買ったので、書いていくシリーズの続き。
2.内容
2004年リリースの3rdフルアルバム。こちらも大手Earache Recordsからリリース。2年ごとにいいペースで作品をリリースしていますね。メンバーチェンジも1stからここまでなく、仲良くやっている模様。
音楽的な方向性は一緒と言っていいが、ストレートな暴虐性が増しつつも楽曲にメリハリがついたのと、音質・音圧の向上による圧迫感がかなり出ている。前作(2nd "Nihility")はの音はヘッドホンで聞くとなんだかスカっとした空間が感じられるやや薄いものだったが、今回は硬質でありながらドラムもギターも1音1音がとにかく太く空間を埋め尽くしているという感じ。
楽曲的にはブラスト爆走系の#1,#2,#3,#7と、ややスローでMorbid AngelのG"Gateways To Annihilation"的な展開を見せる#4,#6,#8など曲ごとの個性が出たかな。曲を通じて1つのテーマリフを土台としつつスローにじわじわ展開していく#6 The Negationなんかは新機軸っぽいが、爆速厨は歓迎しないかもしれん。総合的には楽曲の印象が増している。音質の向上も相まって、彼らのカタログの中でもキラーな出来です。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★★
1stと3rdが今のところツートップやな。
4.どのような人に推奨するか
相変わらず硬質で刻みがカッコイイデスメタルをやってくれている。本バンドの1st,2ndが気に入った人なら間違いない。
Decapitated / Nihility
- アーティスト: Decapitated
- 出版社/メーカー: Earache
- 発売日: 2008/01/13
- メディア: CD
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ポーランドのデスメタルバンドDecapitated / Nihilityをレビュー。
1.作品を選んだ理由
Decapitatedを4枚目まで買ったので、書いていくよ。
2.内容
2002年リリースの2ndフルアルバム。大手Earache Recordsからリリース。超どうでもいいけど、最初にEaracheって単語見たときに、パッと見区切りが判らず意味がつかめなかったんだよね。今ならEar-Acheってわかりますが…。
基本的には1stと同じ方向性で、刻み職人VoggによるVader味のある気持ちいい高速刻みリフと、高速ブラストやストップ&ゴーが乱舞するテクニカルデスメタル。ドラムがかなり硬質なサウンドに…悪く言えばマシンっぽいというか、人間味の薄いサウンドに…なった気がする。バスドラがカチカチと硬い。後ベースがあまり聞こえない気がする。ヘヴィさよりも、スピード感や曲そのものを押し出そうとしているというか。その辺はややスラッシュメタルっぽいと言えなくもない。ドラムのフレーズ・手数・展開は、完全にデスメタルのそれですが。
前作同様、硬質でVaderぽくありつつ、且つ複雑な展開と刻みリフの多彩さを兼ね備えた、耳馴染みの良いカッコイイデスメタルをやっている。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★-
これも十分素晴らしい。ほんとは★4.5くらい。
4.どのような人に推奨するか
タイトで硬質、複雑な曲構成ながらストレートにカッコイイ、そういうデスメタルを聞きたい方。引き続きVader好きにおススメ可能なサウンドだお。
Decapitated / Winds of Creation
- アーティスト: Decapitated
- 出版社/メーカー: Wicked World
- 発売日: 2008/01/13
- メディア: CD
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ポーランドのデスメタルバンドDecapitated / Winds of Creationをレビュー。
1.作品を選んだ理由
最近Vaderにハマっているんです。こちらもポーランドの同郷バンド。
2.内容
2000年リリースの1stフルアルバム。Wicked World Recordsからリリース。圧倒的なクオリティと、中心人物であるVogg
スラッシュメタル由来でエッジの効いたギターサウンドによる超高速刻みリフの応酬に、手数足数が多くハイスピードなデスメタルドラミングが一体になった、テクニカル要素を持ちつつもストレートにカッコイイと感じられるデスメタル。Vaderがスラッシュメタルの延長線上にいるのに対して、こちらはよりテクニカルデスメタルの様相を呈している。重低音が効きまくった重心の低い音ではなく、高音の効いたギターと生っぽいドラムにより、いい意味で軽快な感触さえある。2作目以降はヘヴィさを増していくので、この感覚はこの1stでしか味わえない気がする。ツービートとかっ飛ばしているパートのスピード感たるや素晴らしい。「テクニカル」の要素は、曲展開やリフ・ドラムパターンの多彩さに対して表現されているものであって、技術見せびらかし系デスメタルとは一線を画す。ボーカルもドスの効いた低音咆哮でバッチリ。時折挟まれるギターソロもパートにあったスローでメロディのあるものからテンションの高い速弾きまでこなしている。
サウンドの硬質感はVaderに近いものもあり、実際本作のプロデュースはVaderのPeterだそうだ。とにかくスゴイやつらだよ。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★★
若いのにスゴイとか時代を考えればスゴイとかではなく、単品としてすごくレベル高い。
4.どのような人に推奨するか
Vaderの音質とスラッシュメタル成分を維持しつつSuffocationをやっている感じ。その辺が好きならば是非。
三島由紀夫 / 真夏の死
- 作者: 三島由紀夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1970/07/17
- メディア: 文庫
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三島由紀夫 / 真夏の死 のレビューです。
1.作品を選んだ理由
妻の本棚シリーズ。長編はまだ読んだことない。不道徳教育講座なら読んだことある。
2.内容
様々な年代に執筆された11の短編に、三島自身による巻末解説を含む短編集。新潮文庫からのリリースで、付された自注及び刊行は1970年夏となっている。1970年秋には割腹自殺で死んでしまうので、ほぼ死の直前に書かれた解説と言っても良い。
短編集の解説は難しい。あらすじは書いても仕方ない(調べればそこら中に情報があるので)。単純な感想として、とにかく流麗で豊かな語彙と、人間の精神を捉えた表現が素晴らしいな、と。美しいです。
学校組織や同世代の友人に否定的な『煙草』の主人公は、肉体的・精神的にも強いわけではない少年なのだが、「周りが莫迦に見えて仕方ない」というような意識は、自意識強めで陰キャがち中高生にストレートな共感を呼びそう。自分もそうだったような気がする。
『翼』。愛し合う従兄妹同士が、「相手の背中には翼があるのでは」と夢想することを軸とした話。「模倣が少女の愛の形式であり、これが中年女の愛し方ともっとも差異の顕著な点である」の一文は、なんだかすごくそうである気がして感動した。
『真夏の死』は、主人公・朝子が2人の子供と親戚を水難事故で失い、助かったもう1人の子供と事故には居合わせなかった夫と共に、事故を受け入れ、精神的に回復する過程を描く(受け入れた・回復したとは言い難いのだが)。後半、朝子が事故後に再度子供を身ごもるあたり、地の文による怒涛の問いかけに、三島も人間の精神や生死の捉え方が良く出ているような気がした。
気に入ったのはこんな感じ。あんまり理解できなかった作品もあるけど。『葡萄パン』は、若者言葉か?外人が登場するから?カタカナ語だったり、倒置語(オンナ⇒ナオン、ビール⇒ルービ)がいっぱい出てきて、なんだこれと思ったりしてた。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★-
お話そのものはわかったりわからなかったり。文章とテーマが自分の嗜好にハマるものは凄く面白いと思う。三島作品をもっと読もう。
4.どのような人に推奨するか
耽美で美しい日本語の表現があります。ちょっと小難しいテーマもあり読みやすいかというと、そうでもない気がするが。でも評価されるだけの文豪なので、読んでみてください。私も長編を読んでみます。
Pyaemia / Cerebral Cereal
- アーティスト: Pyaemia
- 出版社/メーカー: Unique Leader
- 発売日: 2001/08/28
- メディア: CD
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オランダのデスメタルバンド Pyaemia / Cerebral Cerealをレビュー。
1.作品を選んだ理由
Pyrexiaかと思ったら違った…が、レーベル買い。
2.内容
2001年リリースで現状唯一のフルアルバム。Unique Leader Recordsからリリース。ドラマーが手首の怪我でバンドから離脱、そのまま2005年以降活動休止状態とのこと。バンド名は膿血症(のうけつしょう)という意味らしいが、医学用語なので字面を見てもわからない。化膿性微生物による敗血症、とのこと。
レーベル買いで期待した通りの素晴らしいブルータルデスメタル。ズンズンと低音を這い、トレモロがうねりと、気持ち悪いリフを紡ぐギター。ほぼ全編休みなくブラスト・ツーバスを続けるドラム。ずっとツーバスだったりブラストしてたりとドラムの手数は多かれども、リフやテンポがスローになるビートダウンパートもあり、全体的には爆走感よりも、オールドスクール感と湿り気の感じられる気持ち悪いデスメタルサウンドとなっている。音質も非常に録音のバランスは良い。ギターソロはなく、ひたすら低音リフで押しまくるタイプ。ボーカルはストレートな低音ガテラルヴォイスで文句なし。
なんというか、とってもDeeds of Fleshです。SE等もなく、余計なものをそぎ落としたストレートなブルータルデスメタル。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★★
これ1作しかないのもったいない。素晴らしい。
4.どのような人に推奨するか
SUffocation系ブルータルデスメタルが好きな人に。どろどろ感はDeeds of Fleshの1st "Trading Pieces"や2nd "Inbreeding the Anthoropophagi"に近いものがあるので、その辺が好きならば是非。
ドナルドキーン / 日本人の質問
- 作者: ドナルド・キーン
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2018/02/07
- メディア: 文庫
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ドナルドキーン / 日本人の質問 のレビューです。
1.作品を選んだ理由
妻が買ってきた。氏のエッセイは『碧い眼の太郎冠者』を読んでいたので、2作目。
2.内容
元は1983年の作品で、2018年に35年(!)の時を経て朝日文庫より出版された。当時著者が朝日新聞の論客として書いた原稿や講演会の内容を納めたもの。再度の紹介だが、ドナルド・キーン氏は日本文学研究の第一人者。長いこと日本語・日本文学を研究しており、当然ながらそこらの一般人ではその知識や語彙力には及びもつかない。
…のだが、キーン自身が外国人であるということから、「刺身は食べられるか」「日本語は難しいか(理解できるか)」「俳句は理解できるか」などを聞かれてしまうという。そういった質問・やりとりから見えてくる日本人の国民性だったり文化だったりをエッセイ形式で語る。自分も言ってしまいそうな気がするが、そもそも俳句とか自分も理解できていないんだよなぁ。
外国(敢えて"外国"といっておく)文化・文学と比較した日本文化・文学の特質性に言及する章は、まさしくキーン氏の本領。比較によって浮かび上がってくるその特徴に、非常に納得できる。後は、谷崎潤一郎の『源氏物語』を読んでみたくなった。
なお、収録元がバラバラ(講演or原稿、日本語or英語)であり文体や各章の長さは全く非均一。1つの作品というよりは、あくまでオムニバスとして読むもの。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★-
1つの作品として見ると寄せ集め感があるのだが、単純に1つ1つの論を見ていけば非常な名著。
4.どのような人に推奨するか
グローバル化が進んで久しい今、特に「日本人の質問」「日米の相互理解はどこまで進んでいるか」「外から見た日本文化」あたりは、すべての日本人が読んで良い内容。読みましょう。600円なので安いよ。
Despised Icon / Consumed By Your Poison
- アーティスト: Despised Icon
- 出版社/メーカー: Century Media
- 発売日: 2006/04/04
- メディア: CD
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カナダのデスメタル/デスコアバンド Despised IconのConsumed By Your Poisonをレビュー。
1.作品を選んだ理由
先に3rd "The Ills of Modern Man"と4th "Day of Mourning"を持っていて、まぁ良かったので追加購入。
2.内容
2002年のデビューフルアルバムだが、これはリレコーディングのボーナス2曲を追加してCentury Mediaから2006年に再リリースされたもの。
引きずるようなスローリフを伴ったビートダウンや、ドラムとシンクロしたリズミックで機械的なデスメタルリフ、ブラストビートやストップ&ゴーを繰り返しながら複雑な曲展開で進んでいくドラムといった要素は、基本的に後続の作品と同じなのではなかろうか。結構ブルータルデスメタル的な要素がそこそこあって、低音弦の刻みに不協和音とピッキングハーモニクスを組み合わせたようなパートはデスメタルっぽいなぁーと感じさせる。ちょっと機械的な感じで聞いててテンションが上がらないのだが、スッキリと整理されたサウンドは綺麗で聞きやすい。
ボーカルはツイン。ブルデス系の歌詞聞き取れない系低音グロウルと、悲鳴のような高音シャウト寄りの2名かしら?グロウルはまだいいんだけど、高音ヴォイスがなんだか弱々しい&ヘンテコな感じがしてあまり好きになれない。再録の#11 "Poissonnariat"、#12 "Compelled To Copulate"はそういった点が全然気にならないので、多分メンバ交代後のラインナップの方が好き。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★--
あんまり好きじゃない。ボーナスのリレコーディングの方がいいなぁ。でも、この1stのボーカルスタイルがツボだった人は、2nd以降は物足りないのかもしれない。
4.どのような人に推奨するか
デスコア入門に。個人的には2nd以降から入ったほうが判りいいと思うが。
山口路子 / ココ・シャネルという生き方
- 作者: 山口路子
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/中経出版
- 発売日: 2009/08/03
- メディア: 文庫
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山口路子 / ココ・シャネルという生き方 のレビューです。
1.作品を選んだ理由
タイトル買い。
2.内容
2009年、新人物文庫からのリリース。作者は知らなかったが、美術・世界史畑の方であるらしい。フランス・パリにてブランド「CHANEL」を大成したココ・シャネルの人生を追う、個人にフォーカスした書物。生没を網羅した所謂伝記ではあるのだが、歴史書や専門書的な性格は持たない。構成上のポイントは、ストーリーの合間にシャネル自身の言葉を頻繁に引用し、ストーリーそのものよりも彼女のメッセージを届けようとしている点にある。
サブタイトルにもある「彼女はなぜウェディングドレスを拒んだのか?」を基軸として、(おそらく研究的な意味でも不可分だからだとは思うが)シャネルが交友を深めた男性陣との関係性などにも大いに踏み込む。一方で、自分はどちらかというと歴史と絡めた時代背景だったり関連知識を知りたかったが、その点は軽く触れられる程度かしらというところ。いい悪いは置いといて、「著者の書きたいこと」を選択した結果なのだろうと思う。
幕間にコラムや写真がふんだんに使われているのは、評価点。段組や写真、セリフ引用等の点から200ページ近くある本編だがボリューム的にはあっさり目に感じられる。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★--
多分作品のスタイルが自分の需要に一致しなかった。香水『No.5』の由来や、世界大戦とブランドの関連あたりが個人的には印象に残っている。
4.どのような人に推奨するか
個人的には合わないスタイルだったが、シャネルを知るきっかけとしては悪いものではない。もう一段、歴史側に踏み込んだ伝記も読んでみたい。
Ignivomous / Contragenesis
オーストラリアのデスメタルバンド Ignivomous / Contragenesisをレビュー。
Amazonにはなかったので、公式Bandcampを貼る。
1.作品を選んだ理由
なんにも知らないまま、ジャケとレーベル(NWN!)で購入。
2.内容
2012年にNuclear War Now!からリリースの2ndフル。オーストラリアのブラック・デスメタル界隈の人脈で発足しているバンドで、Abominator・Destroyer 666・Denoucement Pyreあたりのメンバーが揃って2006年に結成されたとか。
音楽性は、アメリカのデスメタルバンドIncantationそのまんま。深みのあるディストーションギターから繰り出される、ドロドロと引きずるような低音邪悪リフ、威厳のあるグロウル等の要素はまさに、Incantationの1st "Onward to Golgotha"や2nd "Mortal Throne of Nazarene"といった趣。
ただのフォロワーかと思うなかれ、非常にレベルは高い。リフの質もよいし、演奏も強靭で素晴らしいです。NWN!は信頼できるなぁ。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★−
個性に乏しいと言われればそうなんだけど、邪悪なピュアデスメタルとして高品質なのでOKです。
4.どのような人に推奨するか
初期Incantationタイプの邪悪なデスメタルが好きな人に大推奨。
東山彰良 / 流
- 作者: 東山彰良
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/07/14
- メディア: 文庫
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東山彰良 / 流 のレビューです。
1.作品を選んだ理由
2015年に153回直木賞受賞とのことで、手に取ってみたよ。
2.内容
ということで2015年の作品。手持ちは2017年発売の講談社文庫版。作者の東山氏は台湾生まれ。本作の舞台設定は戦後(日中戦争及び第二次世界大戦後)から1980年頃の台湾となっており、作者の背景が作品に生かされていると感じた。
主人公は戦後生まれの台湾の若者、葉秋生(イエチョウシュン)。戦争経験者である祖父が1975年に何者かに雑害された事件とその真相を追う、というストーリーを主軸に据えつつ、主人公の交友関係・成長・人生を主人公視点から過去を振り返るような形で精彩に描いていく。
登場人物が見慣れない名前と読みのため、最初は登場人物がとにかく頭に入ってこなかった。ようやく人間関係をちゃんと理解できて来たのは作品が半分くらい進んでから。本筋のストーリーは偶に顔を出すが、多くは主人公の人生そのものや考え方に焦点が当てられていて、友人との交友・幼馴染:毛毛(マオマオ)との恋愛(これはこれでストーリーがある)、やくざ者との紛争、軍隊生活など様々な場面が結構な分量で描かれる。青春小説といわれるのも納得。
個人的には終盤、主人公が中国山東省(祖父ゆかりの地)へ往訪するシーンあたりは、ミステリー的にテンションが上昇したかな。プロローグとの関連性も含め、ここは作品の1つのピークなのだと思う。全体的には、平坦に感じた。文体はシンプルで淡々としていながら正鵠を射た表現をしていて、読みやすい。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★--
最終盤だけは一気に読み通したが、中盤はだれてしまって中断しつつ読了に長時間かかった。台湾の歴史に触れられるのは良い。
4.どのような人に推奨するか
トータルでは青春小説といって差し支えない。故に私にはフィットしなかったが、青春小説が好きな人、台湾の歴史に興味がある人には、良いのではないか。
Infernal / Summon Forth the Beast
- アーティスト: Infernal
- 出版社/メーカー: Hammerheart
- 発売日: 2003/04/28
- メディア: CD
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スウェーデンのブラックメタルバンド Infernal /Summon Forth the Beastをレビュー。
1.作品を選んだ理由
2.内容
1999年SHellspawn Recordsからリリースの1st EP。初期Dark Funeralでベースを勤めていたBlackmoonが脱退後に結成したバンド。結局フルアルバムは出ないまま、彼は2013年に逝去された。
音楽的にはDrak Funeral/Marduk系のファストスタイルのブラックメタル。ポイントは寒々しさより、攻撃性の高さやエキサイトメントが前面に出ている点。トレモロリフに終始せず、刻みリフやギターソロも交えつつ全体的にファストに爆走する様は、Infernal WarやImpietyのようなバンドに近いと言えるかもしれない。
あと、音のバランスが非常に良い。機械的ではなく人間が演奏している感じがありつつ、各楽器がクリアに分離されて聞こえる。シャカシャカとした軽いサウンドではなく、重量感もそこそこ感じられる、ファストブラックメタルらしい音。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★-
EPなので短い。地味でオリジナリティは低いが、良い内容。
4.どのような人に推奨するか
比較対象に上げたようなファストブラックメタルファンに推奨。フルアルバムないのが残念だが、見かけたらどうぞ。
Decrepit Birth / Polarity
- アーティスト: Decrepit Birth
- 出版社/メーカー: Metal Mind
- 発売日: 2015/06/09
- メディア: CD
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アメリカのテクニカルデスメタルバンド Decrepit Birth の Polarityをレビュー。
1.作品を選んだ理由
1st "...And Time Begins"が名盤だったので、これも収集。
2.内容
2010年にNuclear Blastからリリースの3rdフル。Unique Leaderから大手に移籍したんだね。メンバーチェンジは基本的になかった模様。基本的には前作2nd "Diminishing Between Worlds"の方向性が継続されていて、中期DeathやCynic 1st"Focus"を髣髴とさせつつも、デスメタル的な攻撃性やブラストビートを保有した音楽。
2ndよりもさらに浮遊感のあるサウンドが増え、Cynic的な感触が増えた。全体的にスピードは緩まり、よりメロディや楽曲の雰囲気が強調されている。クリーントーンの導入、あくまでオマケ的な使い方ではあるもののシンセサイザーの導入なども、その方向性に寄与している。特に#7 "A Brief Odyssey in Time"は1分と短い曲ながら、シンセサイザーがコーラス風の和音にムグムグとした単音シーケンスフレーズを曲全体に配していて、一方でドラムとギターはいつも通りのフレーズ詰め込み高速に駆け抜ける、実験的とも言える異色さ。
3.感想/評価(★の5段階)
★★★★-
1stのころとはもはや全然違うサウンドなので、個人的な思い入れは小さくなるのだけれど。2ndの方向性を研ぎ澄ましたテクニカル・プログレッシブなアルバムとしては十分な出来。
4.どのような人に推奨するか
ブルデスではなく、ブルデス要素のあるテクニカルデスメタル系が好きな人向け。比較に挙げたCynic/Deathはもちろん、近年で言えばFallujahのデスメタルパートに通ずるものもあると思うので、その辺にピンとくる方は是非。