めたすらいむの舟

メタル/書評を通じて、ものを書く練習を行っています。原則平日朝更新予定。なお、推理\ミステリ小説のネタバレは書きません。

イスマイル・カダレ / 夢宮殿

 

夢宮殿 (創元ライブラリ)

夢宮殿 (創元ライブラリ)

 

イスマイル・カダレ / 夢宮殿 のレビューです。タイトルがいいよね。

 

1.作品を選んだ理由

 ↓過去記事のこれで興味を持った作品の一つ。エルサレム賞ブッカー賞の受賞履歴を持つアルバニア出身の作家による作品。

metal-metal-slime.hatenablog.jp

 

2.あらすじ(内容)

 原著は1990年にアルバニア語で書かれた。これはフランス語から和訳した二重翻訳の作品ということの模様。

 幻想小説というべきか、ディストピア小説というべきか。19世紀のオスマン帝国、国民が見る夢を国家が収集・査閲する機関が存在していた。これらの夢は役所(これが夢宮殿)の官吏によって選別され、解釈され、皇帝のもとに送られる。叛意を示すような夢と判断されれば、その夢をもとに夢を見た者、あるいは夢に関連する者は捕縛・収監されたりする。帝国にとっての治安維持部門の1つである。

 このような一種の監視社会の中で、抑圧された悲惨な民衆が書かれるのかと思いきや、話は主人公マルク=アレムがこの役所に就職するところから始まる。ストーリーの大半はマルクが苦労しながら不可思議な夢宮殿に馴染んだり仕事を覚えたりする様や、職歴を重ねて出世をしていく様が描かれている。だだっ広くどの部屋も同じような見た目の官舎でマルクは毎回のように道に迷っており、隣席の同僚の名前も顔もわからない状態で続けられる夢宮殿の仕事風景は、無味乾燥で灰色な印象が強い(7割くらいまでは普通に仕事してます)。公務に従事する個人の描き方としてはとてもリアルである一方、役所や役所に勤める人間(同僚・上司)は不透明であり主人公と読者の不安を煽る。終盤ではマルクの家系と仕事で取り扱った夢にまつわる事件が起き、これを通じて機関の目的や活動が見えてくる。

 

3.感想/評価

 ★★★★ー

 不思議な読み味です。テーマは明らかに管理社会だと思うんだけど、職務描写の印象が強い。英訳タイトルはThe Official of The Dreams Palaceとのことで、「夢宮殿の職員」である。なるほどこちらの方がイメージに近い。

  

4.どのような人に推奨するか

 なんともジャンルが説明しづらく、地味でおススメしづらいのだが…。SFあるいはミステリー的にも読めるし、オーウェルの「1984」的管理社会を描いた小説でもあるので、そういった作品に共鳴する向きに。この作品がアルバニアという国やオスマントルコについて理解を深めるきっかけになっているという点も良かったと思っているので、そういう観点で読んでみるのも一つ。

 

Enmity / Vomit Forth Intestinal Excrement

 

Vomit Forth Intestinal Excrement

Vomit Forth Intestinal Excrement

 

 アメリカのデスメタルバンド Enmity / Vomit Forth Intestinal Excrementをレビュー。

  

1.作品を選んだ理由

 うーん覚えてない…AVRリリースだからだったかな。

 

2.内容

    2002年リリースの1stにデモ7曲を加えたコンピレーション。BrodequinとかDevourmentoみたいなブルータルデスメタルです。ギターはもこもこと歪んだ音色で、リズムが合っているようなそうでもないような超低音リフをズンズンと刻む。もごもごと低音で蠢く中にハーモニクスをキュルキュルさせているタイプのギターパートが大半で、口ずさめるタイプのリフはなく全く覚えられない。ギターソロなども存在しません。ドラムがツーバス踏みまくりブラストしまくりで、偶にテンポを落としたパートも出てくる。ボーカルはヴィーヴィーという感じで何も聞き取れない系の超低音ガテラルボイス。リマスターによるものかわからないが、音質自体は結構クリアだが、ムチムチとした音圧と密度による音の壁はかなりの圧迫感。

 総じて各要素が極端で、視聴者フレンドリーさが全くないアンダーグラウンド感の高いブルータルデスメタル1曲1曲は2~3分と短いのだが、気づいたら次の曲に行っていて曲の切れ目もよくわからないというすさまじさ。

 デモ曲は、サウンドがちょっと薄めである以外に本編との違いはなく、本編が気に入ったなら素直に聞ける品質だと思います。

 

 3.感想/評価(★の5段階評価)

 ★★★--

 曲を認識できない状態でぼーっと聞いていると、なんか無心になれそう。

  

4.作品をどのような人に推奨するか

 メロディもわかりやすさも皆無の、唯々暴虐的なデスメタルが繰り広げられる。それがいいんだよ!というブルデスフリーク向けです。

Yetna Apmaskema / Ancestral Manifest of Evil Poison

 

Ancestral Manifest Of Evil Poison

Ancestral Manifest Of Evil Poison

 

パラグアイのブラック/スラッシュメタル Yetna ApmaskemaのAncestral Manifest of Evil Poisonをレビュー。バンド名が覚えられません。意味を調べてみたけどわかりませんでした。

 

1.作品を選んだ理由

 レーベル買い。Deathrash Armageddonからのリリースだったので、War Bestial系のブラックかなと思って購入。

 

2.内容

 2014年リリースの1st。同パラグアイのMaster of Crueltyのメンバーによる別バンドで、若い連中によるブラック・スラッシュへの回帰といったイメージ。Master of Crueltyはスラッシュ度が強かったように思うが、こちらはトゥルーブラック度が高い。

 ギターは余りザクザクと刻むことはせず、パワーコードの動きやコード感のあるかき鳴らしリフでうっすらとしたメロディを奏でる。ドラムはスタスタと軽快なツービートを主体としつつ、テンポやリズムを変えて疾走一辺倒ではなく邪悪な雰囲気を盛り上げる。ボーカルは一般的ながなり声のデスヴォイス。MayhemのDe Mysteriis Dom Sathanasのような雰囲気もあるが、音色やボーカルも相まって荒涼・冷徹さよりもオールドスクールデスメタル的(もっとメタル的な)アグレッションが感じられる。音質は良好で、ノイズやポンコツ感は全くなし。

 

3.感想/評価(★の5段階評価)

 ★★★--

 地味なんだけど、改めて聞いてみると、結構ひとつひとつのリフや印象的になっていてエライ。

 

4.作品をどのような人に推奨するか

 ブラックメタルの要素はありつつも、やっぱりオールドスクールスラッシュメタルデスメタルの領域かなと。そういうのが好きな方どうぞ。

 

 

遠藤周作 / 海と毒薬

 

海と毒薬 (新潮文庫)

海と毒薬 (新潮文庫)

 

遠藤周作 / 海と毒薬 のレビューです。

 

1.作品を選んだ理由

 作者の名前は知っていたが読んだことなかった。BOOKOFFで見かけ、手に取ってみた。

 

2.あらすじ(内容)

 1957年の作品。太平洋戦争末期、九州のとある大学病院が医学部長の席を争う中で、成果を求めて患者や捕虜を実験台としていく。それに関わる人々の群像劇と言えるか。一つの出来事を中心としつつ、登場人物の主観が変わっていく。

 導入部では、ある男が近くの医者にかかったところ、その医者が先述した事件の関係者であることを知る。続いて、時代がさかのぼり、当時医学生だった勝呂(すぐろ)はこの医局構想の中で事件に関係することとなり、これを止めることも避けることもできず事件に与する経緯が語られる。続いて、看護婦、同期の戸田の回想という形でその出来事と各人の捉え方を描いていく。

 ちなみにこれは続編の構想があったらしいが、正統続編作品としては発表されなかった。ただし、「悲しみの歌」というのが実質的な続編になっているとか。

 

3.感想/評価

 ★★★★ー

 テーマがテーマだけに、面白いというのは憚られる気もするが、ひたすらうらぶれて暗澹とした終末感のある描写は非常に惹きつけられる。作者がキリスト教者であるということ、これに起因する罪悪意識の感じ方の違いが、中盤登場するヒルダに表れている。テーマは「神なき日本人の罪意識」とのことだが、依拠する神があったとしても、こういった状況の中にあって正しくあろうとすることができるものなのだろうか。疑問。

  

4.どのような人に推奨するか

 テーマも文章も非常に暗い。読んで爽快感があるものでもないし、(完結していないからかもしれないが)何らかの解決を見る作品でもない。ただ、人間の心について疑問を投げかける、考えさせる作品となっている。そういった作品が好める方に。

Nihil Domination / Sado Perverser Goat Insulter


エクアドルのブラック/デスメタル Nihil Domination / Sado Perverser Goat Insulterをレビュー。Band Campを貼ってみる。

 

1.作品を選んだ理由

 War/Bestial系に興味を持ち始めて、最初に購入。手持ちはDeathrash Armageddon盤です。

 

2.内容

 2010年リリースの唯一の1stフル。解散済みなので、これだけ持っておけばOK。BlasphemyやBlack Witheryなどと比較可能な、ジリジリとノイジーなギターに削岩工事のようなドラムが絡み、治安悪くひたすら突撃しているデス・ブラックメタル。メロディはなくリフも何を弾いているかはよくわからない。ボーカルにはリバーブなのかエフェクトなのか何かしらかかった、ドスの聞いた呪詛のような低音。勢いと音の圧力だけは本当に凄い。#4 なんかは開幕からフルブラスト⇒高音シャウト⇒謎の爆発音と、開幕からやらかしており、その勢いのまま3分弱の曲を駆け抜ける。早いブラストはもっといくらでもあると思うが、この性急さと前のめり感はWar/Bestial特有だと思います。基本的に同じテンションで26分爆裂し続けます。Deiphagoにも近いかもしれません。最後の#10はSarcofagoのカバー。

 

3.感想/評価(★の5段階評価)

 ★★★★-

 このジャンルとしての要件充足度合いは相当に高い。この音圧に包まれるのは結構快感です。これも音楽なんだなあ、と見識が広がった気がする。

 

4.作品をどのような人に推奨するか

 War/Bestialの中でもブラスト一辺倒且つノイズ塗れの極悪サウンドを求める方にはおススメ。

Goat Semen / En Vivo En Lima Hell

 

En Vivo En Lima Hell

En Vivo En Lima Hell

 

ペルーのブラック/デスメタル Goat Semen / En Vivo En Lima Hellをレビュー。

 

1.作品を選んだ理由

 先に紹介した1stをいたく気に入り、次に手に入りやすかったこのライブアルバムをゲット。というか、他は手に入る気がしない。

 

2.内容

 2007年リリース、2003年ペルーはリマ(つまり地元)で録音のライブアルバム。#11以降はライブではなく、リハーサル音源。後に1stに収録される曲としては、#2, #8がある。それ以外は、それ以前のデモやスプリットに入ってたり入ってなかったりする(全部調べてません)。

 音楽的な方向性は1stアルバムの紹介に譲るとして、特徴は荒々しいサウンドと、ライブならではの前のめりな勢い。音質は粗めで最初に聞いたときはこれは買って失敗したか?と思った。音量はドカドカとうるさいドラムとヴォーカルに寄っていて、ギターやベースは低音に紛れ曖昧模糊とした感じ。今聞き返してみると、このベーシックな感想は変わらないものの、結構聞けるバランスだと思った。

 スタジオ盤に比べると特にドラムとボーカルの爆発力がすさまじい。ボーカルは声のささくれ方が激しく、ハイトーンシャウトも1stより連発している。ドラムは本当にデカい音でブラストしまくっている(激しいパートではギターは聴きとるのが相当困難)。

 演奏から曲間~MCに至るまで、地下音楽の臨場感がひしひしと伝わる。狭いハコで、暑苦しい演奏が眼前で繰り広げられる様子が目に浮かぶ、「正しくライブアルバムしている」と思えるアルバム。行ったこともないのに、南米の雰囲気を勝手に感じてしまう…。

 

3.感想/評価(★の5段階評価)

 ★★★★★

 購入当初は音に馴染めず★2の気持ちだったけど、改めて聞くとこれは凄いわ。音質の荒々しさを許容できるなら、スタジオ盤よりライブ盤の方がいいとも思える。

 

4.作品をどのような人に推奨するか

 エクストリームメタル好きで、音質が荒くても平気な人。サウンドに馴染めてしまえば至高の一枚になり得るかと。

恩田陸 / 夜のピクニック

 

夜のピクニック (新潮文庫)

夜のピクニック (新潮文庫)

 

 恩田陸 / 夜のピクニック のレビューです。

 

1.作品を選んだ理由

 第2回本屋大賞受賞の文句によるきっかけ。

 

2.あらすじ(内容)

 2005年の作品。ある進学高校の年間伝統行事「歩行祭」。一昼夜かけて約80キロの道のりを、生徒たちがひたすらに歩き続ける。高校三年生の彼らは親友たちと歩きながら、夜の雰囲気や疲労にもあてられて、それぞれの思い出や秘密を語らっていく。主人公といえる融と貴子は同じ学年同じクラスの異母兄妹で、その背景から同じクラスになってからも「半径3メートル以内に近寄らない」ような距離感を保ってきた。周囲にも秘密を貫いていたが、歩行祭をきっかけとしてこの関係性に変化が訪れる。

 やっていることは本当にそれだけ、ひたすら歩いているだけ。しかしながら、日本の学校に所属していたものとしては、共感を覚えちょっと感傷的になる部分もある。登場人物が基本的にみんないいやつ(特に戸田君)。文体もあるかもしれないけど、みんないいやつすぎるというか、みんなあまりに美しいというか…これが青春小説というものなのかもしれない。

 ページ数は450ページ弱とそこそこのボリュームだが、軽い文体と会話文で、存外さらっと読み通せる。

 

3.感想/評価

 ★★★-ー

 個人的にはどんどん夜が深まってくる1日目の夜(特に仮眠所以降)からが好きです。基本的に登場人物が陽で、陰キャはいませんね。そういう話じゃないとはいえ。

 

4.どのような人に推奨するか

 キラキラした青春小説が好きな人、学生~20台前半くらいまでで日本の学制下にいた人。陰の者が読むと、眩しすぎて文句つけたくなるかも(ワイのこと)。 

Goat Semen / Ego Sum Satana

 

Ego Sum Satana

Ego Sum Satana

 

ペルーのブラック/デスメタル Goat Semen / Ego Sum Satanaをレビュー。

 

1.作品を選んだ理由

 War/Bestial系に興味を持ったきっかけが、彼らのWarfare Noiseという曲だったと思う。この曲のカッコよさに感動して、このアルバムを買い求めた。Hells Headbangers盤。

 

2.内容

 2015年リリース、現時点で唯一のフルアルバム。結成は2000年にまでさかのぼる。この1stまではSplitやライブアルバムのリリースのみだったようだ。

 音楽的には、Sarcofagoの正統進化版といったところ。初期Sodomや初期Sepultura的な汚いスラッシュに由来する邪悪な高速リフ、ツービートやブラストビートを駆使した疾走感のあるリズムと曲調、地獄からの呼び声のような喚きデスヴォイス、偶に見せるハイトーンシャウト。攻撃的でハイスピードな印象を保ちつつも、リズムや曲展開は結構凝っていて、あまり一本に感じるところはない。10:33の長尺曲(#8)のみ、低速でじわじわとした展開を見せるドゥームデス的な曲であるが、それ以外は基本的に高速ですっ飛ばす全9曲38分は非常に気持ちがいい。

 音質は加工感のない生の迫力があり荒々しいが、この手の音楽にしては非常にバランス良好でボーカル・ドラム・ギター・ベースが良く分離して聞こえてくる音になっており、演奏もうまいので何をやっているかわかりやすい(あくまでウォーブラック基準で良いという話なので、近代的な音は期待しないこと)。純粋にエクストリーム音楽としてのカッコよさを体感できるようになっている。

 

3.感想/評価(★の5段階評価)

 ★★★★★

 やっぱ#4 Warfare Noiseのハイトーンシャウトですわ。「↓わー↑ふぁーーー!」。これ最高。

 

4.作品をどのような人に推奨するか

 War/Bestialに興味のある人、汚くて邪悪で勢いのあるエクストリームメタルが好きな人は是非買いましょう。

伊坂幸太郎 / ゴールデンスランバー

 

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

 

伊坂幸太郎 / ゴールデンスランバー のレビューです。

 

1.作品を選んだ理由

 高名な氏の作品で、2008年本屋大賞を受賞という点から最初に選択。

 

2.あらすじ(内容)

 2007年の作品。首相がパレード中に爆殺され、主人公がその実行犯としてマスコミに大報道される。何者かが自分を犯人に仕立て上げようとしているなか、無実の主人公が逃亡を重ねていくという物語。

 

3.感想/評価

 ★★★★ー

 ミステリーがどうとかではなく、スリルとアクションとスピード感あるエンターテインメント小説として楽しめました。小説の構成が、始まり⇒事件の視聴者⇒事件から20年後⇒事件⇒事件から3か月後となっていることもあり、序盤に仕込まれた伏線を戻って読みたくなる。

 

4.どのような人に推奨するか

 ミステリーにファンタジー要素(中世的な世界観とかではなく、非現実という意味です)を許容できる方であれば、エンターテインメントとして楽しめる方であれば、とても面白く読めると思います。結末は私はこれでいいと思うけど、伏線が回収されていないと思う人もいるらしい。

 

Gorguts / Obscura

 

OBSCURA / RE-ISSUE 2015

OBSCURA / RE-ISSUE 2015

 

 カナダのプログレッシブデスメタルバンド GorgutsのObscuraをレビュー。

  

1.作品を選んだ理由

    名前だけ知ってた。ゴアでガットなので、てっきりブルータルデスかと…。

 

2.内容

 1998年リリースの3rd、本品は2015年にCentury Mediaからの再発。超複雑でリズムを見失う展開に、不協和音を主としたテクニカルリフを中心とした変態的なデスメタル。不協和音といっても、暗黒性の高い邪悪なメロディといった趣きではなく、無調で不快感のある音使い。同じカナダだからかもしれないけど、Voivod的に感じました。確かに基本的なフォーマットはデスメタルだしヴォーカルもデスボイスなのだけど、曲展開や音の気持ち悪さが随一で、非常に独自性がある。うまく比較対象が出てこない。MeshuggahとかのDjentでもないし、Spiral Arhchitect的なテクニカルさともまた違うんだ。

 

 3.感想/評価(★の5段階評価)

    ★★★--

 気持ち悪くて聞き疲れするが、確かにすごい。何度か聞いたら感想変わる系な気がする。

 

4.作品をどのような人に推奨するか

 テクニカルよりはアヴァンギャルドなものを好む人。この密度を60分はキツイが、ハマれる人にはすごくハマる音だと思う。

伊坂幸太郎 / 重力ピエロ

 

重力ピエロ (新潮文庫)

重力ピエロ (新潮文庫)

 

伊坂幸太郎 / 重力ピエロ のレビューです。

 

1.作品を選んだ理由

 最初に「ゴールデンスランバー」を読みまして、そこそこ気に入ったので。

 

2.あらすじ(内容)

 2003年の作品。主人公とその弟が、連続的に行われるグラフィティアート(落書き)と放火の謎を解いていくお話です。

 

3.感想/評価

 ★★★ーー

 数ページずつにチャプターが区切られていて、軽快に読み進められます。文体と会話が御洒落ですが、本筋に関係あるようなないような、小難しい会話をやたら兄弟がしているのは、なんか違和感がありました。ファンタジーとして読めばOK。おそらく話の核であろうミステリー部分は、主人公の職業(勤務先)とあるキャラクターが出てきた時点で先読みが出来ました。

 

4.どのような人に推奨するか

 特にミステリー度は高くないのと、題材がちょっと倫理的な意味で重めと思います。そういったテーマがOKな、青春小説的な作品が好きな人向けでしょうかね。

 

Glorification / Against all Adversity - A Hymn of Demonic Victory

 

https://www.metal-archives.com/images/6/6/6/0/666047.jpg

パラグアイのブラック/デスメタル GlorificationのAgainst all Adversity - A Hymn of Demonic Victoryをレビュー。Amazonリンクがないので、画像だけ貼っておきます。タイトル長っ。

 

1.作品を選んだ理由

 事前情報なし。ジャケットとリリース元がDeathrash Armageddonであることで、きっと汚いWar/Bestial系のサウンドであろうと信頼して購入。なお、パラグアイボリビア・アルゼンチン・ブラジルに囲まれた南米の内陸国

 

2.内容

 2017年リリースの1st。南米感のあるブラック/デスメタルで、オールドスクールデス的な低温リフを刻みながら、低速ブラスト(BPM140前後)で進んでいく。ボーカルはエコー掛かった怒号が遠くから威嚇してくる。アンダーグラウンド感がありつつ結構聞きやすい音です。Blasphemy系の、想定通りのサウンドです。

 

 3.感想/評価(★の5段階評価)

 ★★★--

 想定通りではあるが、普通。たまに聞いている。

 

4.作品をどのような人に推奨するか

 Blasphemy等のWar/Bestial好きに向いている音です。

松橋良紀 / 何を話せばいいのかわからない人のための雑談のルール

 

松橋良紀 / 何を話せばいいのかわからない人のための雑談のルール のレビューです。

 

1.作品を選んだ理由

 中古で見かけてなんとなく。自分は雑談へたくそなので。

 

2.あらすじ(内容)

 2013年の作品。文庫向けに書き下ろし。雑談の目的、進め方、思考方法などが紹介される。「雑談が得意か?」と質問されると計7割は得意ではないとの回答であったらしい。実践しやすく単純な技術が多いが、それが実践できていることはすくないということなのだろう。参考にできる。

 技術面としては、「相手に話させる・聞き上手になる」方向が多く、自分自身が話すこと・自身のことを話すことをあまり是としていない。この本では技術を実践した結果相手が気持ちよく話してくれる!という成功例が良く出てくるのだが、この本を参考にした雑談下手が二人揃ったら会話が進まなそう。そういう意味では「自身の話し方」について述べられている雑談のコツ:質問を交えながら話すことで相手を強制的に会話に参加させる、は重要だと感じた。

 雑談のテーマ例を見て思ったけど、ベースとして知識(準備)が必要なのだなとも。旬の食べ物、芸能ニュース等、ネタになるものを仕入れることが大事というのは全くその通り。

 

3.感想/評価

 ★★★-ー

 ページ数は少なく、行間文字間も広いので、1時間くらいで読めます。

 なお、作中に登場する「完璧主義診断」が結構あてはまっててワロタ… 

 

4.どのような人に推奨するか

 雑談に苦しむ私のような陰の者は読んでみてもいいかもしれないが、聞き上手になる方向性が強めなので、そもそも「自分の話をできるようになりたい」という人には合わないかも。

V.A / 世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今

 

世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今 (立東舎)

世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今 (立東舎)

 

世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今 のレビューです。V.AはVarious Artists。

 

1.作品を選んだ理由

 なんか妻が図書館で私向けにと借りてきた。

 

2.あらすじ(内容)

 文学賞とその受賞作をテーマにした複数作家による鼎談形式の書籍。2016年の本。芥川賞直木賞ピュリツァー賞(ワイ、写真の賞だと思っていた)・ゴンクール賞エルサレム賞ノーベル文学賞ブッカー賞カフカ賞あたりがテーマ。作品だけでなく賞そのものの方針や傾向も語ってくれるので、勉強になる。ゴンクール賞の賞金安っ。

 

3.感想/評価

 ★★★ーー

 対談形式の本ってあまり好きではないのだけど、興味を持てる本・作者が見つかったので良かった。文庫なさそうだけど、「夢宮殿」「グルブ消息不明」とか読んでみたいですねえ。

 

4.どのような人に推奨するか

 読書・文学に興味をもちはじめた初心者で、何かしらの当てを探している人にはちょうどいいのでは。

 

Mutilator / Immortal Force

 

Immortal Force

Immortal Force

 

ブラジルのブラック/スラッシュメタル MutilatorのImmortal Forceをレビュー。

 

1.作品を選んだ理由

 War Bestial Black Metalガイドブックだったか、Record Boyの店頭だったか忘れました。

 

2.内容

    1987年リリースの1st。手持ちのものは2曲のボーナストラックを含む全11曲。ボーナスは1986年のデモが出典の模様。

 ブラジルの初期ブラックメタル・ブラックスラッシュとして紹介されるバンドだが、この1stは完全にスラッシュメタルと言ってよいかと思われる。曲は高速で突撃する曲が大半で、唐突に切り込んでくるギターソロ、ドタドタと性急なドラム、なんとなく治安の悪さを纏った空気は、ブラジル初期スラッシュ感満載。特徴は、とにかく歪に尖ったギザギザのギターサウンド。擬音をつけるなら「ガツガツ」といったところで、重さと切れ味に優れた強力な音で、最初に聞いたときは結構感動した。

 

3.感想/評価(★の5段階評価)

 ★★★★-

 突撃感あふれるスラッシュメタルチューンに、このギターサウンド。素晴らしいものがある。

 

4.作品をどのような人に推奨するか

 音質がハイクオリティでなく、邪悪で突進力の高いスラッシュメタル好きに。Kreatorの初期作とか好きな人にもいいのかもしれません(2ndとかね)。